Last Oath



























      「・・・・これは、どういうことだい。」

      


      



      
      会議から帰ってきた半兵衛は、自室の前で呆然と立ち尽くした。

      「これは嫌がらせかい?それとも何かの冗談かい?」

      「何が?」

      「何がとは愚問だね。ここは僕の部屋だったはずだけど。」

      「知ってるよ。」

      「それが知らぬ間にこんな状態になってるのは何故かな?」

      「びふぉー・・・・あふたー!」

      「あぁもういいさ君には何を言っても無駄なんてことわかっていたさだけどねこれはどうかと思うんだ。」






      部屋が、銭湯になっている。







      いや、正しくは露天風呂が部屋の奥にくっついていて、勝手にここが脱衣所とされていた。

      『脱衣所』と書かれた看板を力任せに叩き割る。(字間違えたらしい)


      「あー!!!なにすんのっ!」

      「君は知っているといったね?ここが僕の部屋ということを知っていると言ったんだよね?」

      「隅っこだけだよ!!脱衣所は!!」

      「隅っこだろうがなんだろうがここは僕の部屋だ。あと早急にその露天風呂をどうにかしたまえ。」

      「やだ!!!」

      「嫌でもどうにかしろ。」

      「やーーーだーーーー!!!!!」

      「やだじゃない。」

      「やぁああああああだあああああああああ!!!!!

      「わがまま言わないの!!!

      「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!

      「僕が仕事終わるまでにどうにかしないと秀吉に言いつけるよ!!!

      「・・・う、うあ゛ぁぁん・・・!!うあ゛ぁぁぁん・・・!!!」

      「泣いても駄目なものは駄目だよ。」

      「・・うっ・・ぐすっ・・・うぅ・・・」

      「ちょっと。僕のマントで鼻水拭かないで。

      幼児のように泣いているくせに、「・・いつか錘付けて風呂に沈めてやる・・・・」なんて恐ろしいことを呟く


      「・・・・で君はなんで服を脱ごうとしてるのかな。」

      「一回入ってお別れする。」

      「僕は?」

      「・・・・・。入る?

      「まず常識で考えてみようと思わないかい?

      この少女は全く手のかかる。

      ああ言えばこう言い、ああすればこうする。

      こんな女見たことない。

      いや見たことあってたまるかといいたいが。

      「半兵衛も一緒はいろ。」

      「丁重にお断りさせていただくよ。」

      「腰痛肩凝り冷え性解消はお手の物。桜の香りに心も体も癒されますよ。」

      「そんなもっともなこと言われても入らないから。

      「あぁ!?オメェ恥ずかしがってんな?!全く男のくせに照れんなよぶー!」

      「君はもう少し女として恥ずかしがったほうがいいよ。」

      「照れることはないさ。僕と君の仲だろう?」

      「僕の口調でとんでもないこと言わないでくれ。僕の声で皆が想像してしまったらと思うと寒気がするよ。」

      「そんな照れ屋のあなたには着たまま入れるこの着物をお与えしよう。今ならなんと試着可能。」

      「いらないから。入らないから。

      一体何がしたいんだろう。

      何故こうも僕を入らせたがるんだろう。

      毒でも入ってるんじゃないかこの風呂。

      「おお!なるほど!星を見ながら月見風呂と行こうか兄ちゃん!!洒落てんなぁオイ!!」

      「誰がそんな提案したんだい。ちょっと善左衛門に診てもらおうか。頭を。」

      「じゃあはそれまでつゆゆゆと遊んでくるよーん。」

      ・・・・ゆが一個多いぞ

      がうっほほーいと出て行った襖と露天風呂を交互に見やり、半兵衛は深くため息をついた。




















































































      は上機嫌で、つゆのいる女官室に入った。


      毎度の事ながら、女官は驚いてを見やる。

      「つゆゆー、うまくいきそうだよー。」

      「まぁ!よかったですねw」

      二人は仲良く喋りながら、女官室を出た。

      「半兵衛様はなんて?」

      「意地っ張りな半兵衛さんは入らないって言ってる。」

      「まぁ・・・、半兵衛様、入ってくださるかしら。」

      「入るよ。」

      「がそう言うなら、半兵衛様は入るんでしょうね。」

      自信たっぷりのに、つゆはくすりと笑った。

      「だってねだってね、お風呂セットあげるんだよ。」

      「お風呂せっと?」

      「ねじを回せばあら不思議!アヒルさんがガァガァ鳴いて泳ぐのです。半兵衛は喜んでお風呂に入ります。」
 
      「・・・・そうなの?;;;」

      「まだあるよ。シャンプーとコンディショナーとリンスとタオルとつるつる卵肌洗顔石鹸とー。」

      「・・・・。」

      どんどん出てくる謎の物体たち。

      これに半兵衛様は本当につられるのだろうか。

      「この素晴らしき偉人たちに半兵衛はメロメロなのです。」

      「へ、へー・・・・。」

      「あとねあとね、体中の疲れがすっきり取れるお風呂にぽちゃんっていれるやつ。」

      「はいろんなものを持ってるのねー・・・。」

      見たこともないものたちを、つゆは不思議そうに手に取った。

      そして半兵衛の事を思ってのことなのだろう、とつゆは笑みを零す。

      「は半兵衛様が大好きなのね。」

      「うん。」

      「もう付き合ってるの?」

      「え?付き合う?なんで?」

      「・・・え。」

      からかうつもりで言ったのに、逆に質問を返されてしまった。

      「なんでって・・・好きなんでしょう?」

      「うん。」

      「ってことは、恋愛の好きじゃないってこと?」

      「うん。」

      即答で返され、つゆは呆気に取られた。

      てっきりつゆも、噂どおり二人は付き合っているのだと思っていたからだ。

      「じゃあ、久作様との噂が本当なの?」

      「噂?」

      「半兵衛様の妹だとか、半兵衛様の伴侶だとか、久作様の伴侶だとか。」

      「伴侶ってなに?」

      「婚約者よ。」

      「婚約者?が?半兵衛かキューちゃんの?」

      「ええ。」

      「ちゃうわーい。」

      「違うの?」

      「あったりめぇだ、おらはそんなものになった覚えないだ。」

      そうだったの?とつゆは首を傾げる。

      いつの時代も、この手の話を女性は好むらしい。

      「だって、好きな人いるもーん。あは言っちゃった言っちゃったw」

      「えぇっ!?だれだれ!?」

      「うへへーw」

      「半兵衛様でも久作様でもないんでしょう?」

      「ちぁうよーん。」

      「うーん・・・・、三成様?」

      「みっち?ちゃうわ。」

      「じゃあ・・・官兵衛様とか。」

      「んなわけあるか。あんな目つき悪いやつ。」

      「えー・・・じゃあ・・・だれかなぁ・・・。」

      うーんとつゆは考え込んだ。

      それ以外に女性に人気がありそうな男は誰がいるだろうか。

      大半の人気は竹中兄弟が占めていて、クールなところがいいと三成も人気だ。

      官兵衛も母性本能をくすぐられるとかなんかで結構人気なのだ。

      一人悩んでいるつゆに、は小さく笑った。













      「・・・・・今度、教えてあげる。」










 


      そっぽを向いていたの表情は見えなかったが、振り向いたは悪戯に笑っていた。

      「えー!?今教えてくれないのー?!」

      「えへーw」

      「ねぇねぇ、どんな人?」

      「今度ねーw」

      「えーっ!」

      「あ!今度お泊り会しようよ!!」

      「まぁ!お泊り会!?楽しそう!!」

      「そのとき教えてあげるー!」

      
      そのあとも暫く、二人は会話に花を咲かせた。



      「またねー!!つゆゆー!!!」

      「うん、またねっ。」

      ぶんぶんと何度も振り返っては手を振ってくるを可愛いと思いながら、つゆも手を振り返してやった。



























































      「たっだいまはーんべーw」

      「お帰り。そろそろこれをどうにかする気になったかい?」

      「はいこれお風呂セット。」

      「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

      「もうすぐ一番星が出るころですよー。」

      鼻歌を歌いながら、は外を覗き込む。

      「入らないと、僕は言っているんだけどな、。」

      「夕方からはの時間。」
 
      「・・・・・・・どうしてそこまで入らせたがるんだい?」

      半兵衛はずっと疑問に思っていたことを尋ねた。



      「・・・・・・・腰痛肩凝り冷え性解消はお手の物。桜のか「それはもういいから。」・・・・」

      ため息をついた僕を見て、はしょんぼりと項垂れた。


      

      「・・・・疲れも、すっきり・・・・。」




      「・・・・・・」

      ああ、そういうことか。

      その言葉にピンと来て、僕は思わず笑みを零した。





      彼女なりの、小さな優しさだったのだ。








      「・・・・・すぐ片付けるから、許してちょ。」

      「・・・。」

      「いいのさ、僕はピエロさ。」

      「。」

      「お邪魔虫は泡になって溶けます。遺言は手紙に書くのでよろしおす。」

      「、入るよ。」

      その言葉に、は勢いよく振り向いた。

      僕も甘いな、と自嘲気味に笑みを漏らす。

      「よろしいのどすか?」

      「うん。」

      「うちの我侭を聞いてくれはるなんて・・・・」

      ありがたやありがたやーとは手を擦ってお辞儀をする。(何の真似のつもりなんだろう)

      「あ、じゃあこれ着たまま入れる着物ちゃん。」

      「・・・・・・・・・・・・どうも。」

      「あ、これのだった。半兵衛この青ね。」

      「・・・・・・・・・・・・・・・え?」

      「え?」

      「もしかしても入るとか言わないよね?」

      「え、何言ってはるの。」

      「・・・・・・・・・・・・・。」

      何で自分がと風呂に入らないといけないんだ。

      「・・・・・だめなら、我慢・・・・。」

      「わ、わかったよ!;;」

      いつも無理やりなくせに、こんなふうに引かれると逆にこっちが悪いことをしたような気になるではないか。

      そんな良心から、半兵衛は思わず承諾してしまった。


      ・・・・僕としたことが。


      「・・・・・・・・。」

      「〜♪〜♪見つめんなよベイべーw」

      「・・・・・・はぁ・・・・。」

      ・・・馬鹿娘め。

      少しでも良心を見せた自分が馬鹿だった。

      早々に自分の後ろで着替え終わったは、「やっほーい!!!」と思い切り風呂に飛び込んだ。

      ・・・・ウザい。

      「半兵衛早くー!!!」

      「・・・。」

      相手はだ。

      もういないも同然にしよう。(酷い)

      のいう着たまま風呂に入れる着物とやらに着替えると、半兵衛はのはしゃぐ風呂にため息ながらに入った。

      「ねぇねぇ、疲れ取れた?疲れ取れた?」

      「君がいなかったらもっと取れる。」

      「・・・・・・・・・・・。」

      「ごめん。冗談。

      なんでそんな子犬みたいな目するかな。

      「じゃあ、喋んないから、ゆっくりしてくださいね。」

      「・・・・。」

      「・・・・。」

      「・・・・。」

      「・・・・。」

      が静かだと、逆に気持ち悪いかもしれない。

      「・・・。」

      「・・・・・・・・・ん?」

      「・・・・・別に、喋ってもいいよ。」

      「・・・・・・うん。」

      「・・・・・・・。」

      「・・・・・・・。」

      「・・・・・・・。」

      二人の間に、再び沈黙が流れる。

      「・・・・。」

      「・・・・ん?」

      「・・・・。」

      「・・・・どうしましたか半兵衛さん。」

      なんだか、がしおらしい。

      柔らかく笑うに、普通にしていれば可愛いのにと不覚にも思ってしまった。

      僕のために色々してくれたのかと、少し感動した。

      「別に・・・邪魔じゃないよ。」

      「・・・うん、ありがとう。」

      「僕がずっと仕事ばかりしてるから、こんなもの作ってくれたんだろう?」

      「・・・・違うやーい。」

      半兵衛の方を見らずに空を見ているに、半兵衛はくすっと笑った。

      「ありがとう、。」

      濡れているの髪を撫でる。

      「・・・駄目だった、し。」

      「取れたよ、十分。」

      「・・・違うもん。」

      「・・・・どうして?」

      もう少し喜んでやればよかったのだろうか。

      なんだかが可哀想に思えてきて、半兵衛は戸惑った。
































      「仮面。」






































      「・・・・・・・・・は?

      自分の聞き間違えでなければ、今仮面と聞こえたような気が・・・・。

      「お風呂入れば、取ると思ったんだけどな。」

      「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」








































       僕の感動を返せ!!!!!!!!




























      僕は本気で、を叩いた。


      「いって!!」

      「・・・・・。」

      「なにすんの!!」

      「少しでも良心を出した僕が馬鹿だった。」

      「半兵衛のバーカ!」

      「なんとでもいいたまえ。」

      「もやしっ子。

      「なんだって?






      風呂の中で口論したせいで、二人は次の日風邪をひいてしまったのは当然かもしれない。





















































































































      (少しだけ距離が縮まった)