Last Oath
「、約束を忘れたのかい?」
半兵衛はそう言うと、半ば諦めたかのようにため息をつく。
自分の背中に寄りかかっているこの少女は、先ほどからちょっかいばかりかけて自分の邪魔をするのだ。
「何の?」
「日が暮れるまで僕の部屋には来ない。僕の邪魔をしない。」
「あー。うん。忘れた。」
「じゃあ今思い出しただろう?今すぐ出て行きたまえ。」
「つれないなハニー・・・、心が痛いよ。」
「訳のわからないことを言ってないで久作とでも遊んでおいで。」
「半兵衛と一緒にいたいの。」
「夕方ね。いっておいで。あ、でも外に出てはいけないよ?」
「ぷー。キューちゃんも今日仕事って言ってたもん!」
「(・・・あそっか。)城の中でも探検してきたらどうだい?まだ僕の部屋と大広間と自分の部屋しか入ったことないだろう?」
「探検?」
「うん。」
「お弁当持って?」
「いや別にそれはの自由だけども。」
「行く!」
「行ってらっしゃい。」
はバッグを引っつかむと、毎度のように部屋を飛び出していった。
「・・・世話の焼ける人だ。」
笑みを含んだ半兵衛の声は、に届くことなく消えた。
「ここーはどこ♪わーたしーはだれ♪ここーははーんべーのおーしろーでわーたしーは♪」
くるりと一回転しながら、ヘンテコな歌を口ずさむ。
正しくは半兵衛ではなく“秀吉の”城なのだが。
「ここーはなーんのおっへっや?」
指を指して通りすがりの人に尋ねる。(歌のせいで口調が変だ)
通りすがりの人は驚いたのか、一瞬びくりと震えを見た。
「・・・こ、ここですか?えーここは・・・女官室、ですね。」
「あーりがとうとうとうがらし♪入ってもよろしくて?」
「様ならよろしいんじゃないでしょうか・・;;」
「っ様ってばどういうこっちゃ?」
「いえ・・・半兵衛様や秀吉様の客人ですから。」
「お客じゃねぇよボケェ。」
「す、すみません;;」
嵐のように過ぎ去ったは、今度は三回転して女官室へと入っていった。
「いらっしゃいまっせー♪」
そう言って入ってきたに、女官室で休憩していた女官たちはピシッと音を立てて固まった。
「歓迎がないー♪寂しいー♪どうせおいらは一匹狼♪」
ウロチョロ動くを追って、女官達の視線もキョロキョロと動く。
「は無名―♪自己紹介しちゃおかな♪」
「・・・あ、あの。」
「いかにも!!我はと申す者!!」
「「「「「(まだ何も言ってねぇ!!!)」」」」」
うはははと笑うに、女官達は冷や汗を垂らした。
の名は、城中に広まっている。
半兵衛の客だとかに尾びれがついて、半兵衛の妹だとかさらには半兵衛の伴侶だとか、他にも久作の伴侶だという噂もある。
当然半兵衛やら久作やらは女官などの女達には憧れの的で、そんな噂の立っているを良く思うものの方が少ないわけで。
「そいえば、こっちの世界で始めて女の子たちに会いました。」
「・・・は、はぁ。」
「哀れみを持ってお友達になってくれるという御仁はおらぬであろうか。」
「「「「「・・・・・・;;;;」」」」」
正直、女官達は心底驚いていた。
印象が全く違うからだ。
半兵衛の伴侶というのだから、もっと艶かしい豪華絢爛といった美人かと思ったら、こんな顔は愛らしいがなんというかそのウ゛ゥ゛ンッ・・・ウェホンッ
そのなんだ。こんな不思議な少女とは。
「・・・・・・・。」
「「「「「・・・・・・・・・。」」」」」
「・・・・・・・・うへへ。そうでげすよね。こんなのと一緒にいたら腐っちまいますよ。正しい選択でげす。帰ります。土に。」
「あああのっ;;」
「止めても無駄です。半兵衛にも邪険に扱われますでしてなうへへへ。」
なんでいきなりネガティブになったんだろうこの人。
さっきまでめちゃくちゃご機嫌だったのに。
まるで芸人のようなの言動に、皆笑いを堪えるのに必死だ。
そんな中、一人の少女がに近寄ってきた。
色素の薄い茶色い髪の、色白の美人だ。
「あの、わ、私でよければっ!;;」
「・・・・本当かい?僕のような奴でもいいのかい?」
「(半兵衛様?;;)い、いえっ、こ、こちらこそっ!;;」
「ありがとう、君は僕の恩人だよ。」
「は、はぁ;;(しかも似てる;;)」
「よろしければ名前を教えてくれるかい?僕は竹中半兵衛さ。」
「(やっぱり半兵衛様だったんだ;;)つゆ、と申します。」
「つゆ?」
「はい。」
「つ、つゆ、つ、つゆゆ。」
「つ、つゆゆ?;;」
「つゆゆね!!」
「あ、はい。」
「のことはって呼んでね。」
「よろしいのですか?」
「うん。」
「よろしくお願いします、!」
つゆがそういうと、はにかっと笑った。
その屈託のない明るい笑顔に、つゆはどこか安心するのを感じた。
「これを友情の証にとっておいてくれたまえ。」
「え、これは・・・。」
「猫のキーホルダーさ。は犬のキーホルダーさ。」
「あ、ありがとうございます!」
それをつゆに手渡すと、は上機嫌で女官室を後にした。
が部屋を去ったあと、つゆは大切そうに、キーホルダーを胸に押し付けた。
「半兵衛ただいま!」
「お帰り。探検は楽しかったかい?」
ちょうど仕事も終わったところだったようで、半兵衛は書類の片づけをしていた。
その隣には腰を下ろす。
「聞いて聞いて聞いてちょ!」
「あんまりはしゃぐと危ないよ、どうしたんだい?」
「ね、女の子の友達出来たんだよ!半兵衛の真似したらね、イチコロだったんだよ!」
「・・・・僕の真似?」
「そうだよ、僕は君の真似をしたんだ。」
「・・・やめてくれないかな。」
「僕もその仮面が欲しいな。」
「あげないよ。」
「そんな冷たいことを言わないでくれ。」
「・・・・気持ち悪い。」
そういってピンッとの額を弾く。
「痛いです、兄上。」
「今度は久作かい?」
それで?と書類を片付け終わった半兵衛はため息交じりに座った。
「つゆって言ってね、つゆゆっていうの。」
「それはまた変な呼び名をつけたね。」
「かわいいよ!」
「そう。」
「あ、惚れないでね?惚れないでねっ?」
「惚れないよ。」
そういって半兵衛はくすっと笑った。
「あとね、半兵衛の客って思われてるんだって。」
「まぁそうだろうね。」
「なんかやだぁ。」
「どうして?」
「だって、客って他人だもん。」
その言葉に、半兵衛はきょとんとした。
はそんな半兵衛をじっと見ている。
「・・・・・・。」
だって、他人じゃないか、といいそうになったが、があまりにも真っ直ぐにこっちを見ているので何故かいえなかった。
「・・・じゃあ、何がいいんだい?」
「家族。」
なんの躊躇いもなくは言った。
「家族?」
「うん。」
「家族は無理じゃないかい?」
「半兵衛知らないの?一緒にご飯食べて一緒に暮らしてたらもう家族なんだよ?」
の言葉が、なんだか無性に心に響いた。
「ねぇ豊臣軍じゃなくて、豊臣ファミリーにしようよ!」
「ファミリー?」
「うん、家族。」
「・・・・。」
「みんな家族だから、みんな助け合うんだよ。最強だね。」
それも、いいかもしれない、と半兵衛はぼんやり思った。
なんだか今日は、と話してよかったかもしれない。
そう思ったのは、には内緒。
オリキャラ多くてわけわからんですね(´・ω・)
つゆは後々結構ヒロインと絡んできます。