Last Oath
 




























      
      『キューちゃん早くー!!』

      
      ガンガンと襖を叩く音が聞こえる。

      

      「先に厩に行って待ってていいよ!」

      久作は手を動かしながら、声を返してやる。

      すると返事の代わりに、タタタ・・と足音が遠ざかっていった。      



      久作は荷物をまとめ終わると、深くため息をついた。

      「・・・兄上、私に恨みでもあるのですか・・・。」

      そう。久作は見事、の目付け役に任命されたのである。

      というより、日暮れまでのいいように使われる玩具のようなものだが。

      「・・・・・違うぞ、僕は玩具じゃないぞーっ。」

      うわーと荷物を振り上げるが、それを叩きつける勇気がなくてちょこんと置くだけに終わる。

      仕方がない。

      半兵衛には逆らえないし、逆らったとしても聞き入れてもらえるはずがない。

      「兄上恐いもん・・・。」

      久作はまるで子供のようにしゅん・・と呟くと、荷物の入った包みを持って部屋を後にした。



























































      パカパカと馬の蹄が鳴る。


      「うはー、馬ちゃんかわいいねー。」

      久作の前に乗っているは、馬の首に抱きついて頭を撫でている。

      が落ちる心配があるのでゆっくりと進んでいるが、の体制はやはり危ない。

      「、落ちるからしっかり前向いて。」

      「落ちないよ。」

      睫長いねー、と楽しそうに笑うに、久作は思わず苦笑いした。

      「馬に乗りたいって言ったからここまで来たけど、どうする?」

      「どっか行きたい。」

      「どこかって・・・・・・どこ?」

      「じゃーなんとなく右。」

      「右・・・。」

      久作は何の疑問も持たずに、素直に右に曲がる。

      「今度左―。」

      「ひだ「やっぱまっすぐ!!」・・・」

      に言われたとおりに進んでいく。

      何だかかなり城から遠ざかっているような気がするのだが。

      「ねぇ、あんまり遠くに行ったら「大丈夫!」・・・・・そう。」

      最後まで人の話が聞けないのかこの子は。

      黙ることのないは、さらに聞いたことのない不思議な歌を歌い出す始末だ。



      「ある〜ひ〜♪もりの〜なか〜♪くまさ〜んに〜♪であ〜った〜♪」


      「・・・やめてよ本当に出てきたらどうするんだい・・・。」

      「はなさ〜くも〜り〜の〜み〜ち〜〜〜〜〜♪くまさ〜んに〜で〜あ〜った〜♪」

      「・・・・。」

      「きゅーさ〜くさん♪」

      「え、僕?」

      「おまち〜な〜さい♪」

      「・・・。」

      「お〜な〜か〜が♪」

      「・・・・・。」

      「へって〜るの♪」

      「・・・、ほんとにこんな曲なの。なんで僕が出てくるの。なんでこんな展開なの。」

      「おにく〜がた〜べ〜た〜い〜な〜〜♪」

      「遠まわしな脅迫だね。」

      「だからく〜わ〜せ〜ろ〜や〜♪」

      「言っちゃったよ。やだよ。

      まったくなんでこんなに元気なんだろう。

      羨ましい・・とは思わないが、はそれほど元気すぎるのだ。


      「キューちゃん、今度一緒カラオケ行こう!」

      「空桶?」

      また唐突な・・・。と、久作は苦笑した。

      「そうー、あんね、歌うの。」

      「ふーん、桶の中で?」

      「え?カラオケだよ。オケって何。」

      「え?桶って・・・桶だよ。」

      「カラが抜けてるよキューちゃん。」

      「え?空桶でしょ?」

      「うん。カラオケ。」

      「別に空桶じゃなくても歌えるんじゃないの?」

      「何言ってんの、マイクとかあった方がいいでしょ。」

      「意味わかんないよ・・・・。」

      「えー?キューちゃんってばバカだねー!!」

      「・・・・・・・・・。」

      に言われるとムカつく・・・。

      久作は顔をムッと顰めると、の額を軽く小突いた。

      「った!」

      「わっ!危ないって!」

      大きくよろけたを久作が支えてやると、は「楽しかった!もっかい!」とせがみだした。

      「だめ。」

      「えー。」

      「雨降ってきそうだし、そろそろ帰るよ。」

      「えー!」

      「えーじゃない。あ。」

      「あ?」


















      「道がわかんない。




















      その言葉に、流石のも固まった。







      楽しくて。







 
      「うっほーいたのしーーーーーーー!!!!!!」

      「楽しくない!!;;;」
 
      「うっははw」

      「あー・・・・どうしよう・・・。」

      「野宿野宿―!!」

      「・・・・・いいね、気楽で。」

      「あーでも半兵衛と遊べない・・・。もう夕方なのにー。」

      「えーと右に行ってずっとまっすぐ来たからー・・・・」

      「じゃあ右にまっすぐ行けばいいんだよ。」

      「違うでしょ。左から来たんだから右に行ったらさらに遠くに行くことになるでしょ。」

      「えー?」

      「だってあっちから来たんだから・・・・あっちから・・・・あっち・・・・?」

      「あっちってどっち。」

      「どっちってそっち?」

      「そっちってあっち?」

      「え、だからあっちって・・・・・・・どっち・・・・・・。」

      なんかわけわかんなくなってきた。

      「おいおいしっかりしろよキュー。」

      「僕道覚えるの苦手なんだよね。」

      「早く言えよ。

      「忘れてたんだよ。」

      「あほちーん。」

      「うるさいな。」

      とりあえず考えてるよ、と久作は馬を進ませた。


      「あーもう半兵衛ちゃん待たせてるのよー。」

      「半兵衛さまと呼びたまえ。」

      「うわ、半兵衛さまみたい。」

      「真似したんだもん。」

      「はー。」

      馬に乗りなれていないは、流石に疲れてきているらしく、口には出さないが少しずつ元気がなくなっていた。

      「、大丈夫?」

      「だいじょーぶと思うかいヘイボーイ?」

      「独眼竜みたいなことを言うね。」

      「そういう時は「OHごめんよヘイガール」って言うんだよ。言ってみ。」

      「おーごめんよへいがーる。」

      「もっと軽やかに。」

      「おーごめんよへいがーるっ。」

      「肩の力を抜いて!はいOH!」

      「おー。」

      「OH!」

      「おー!」

      「ノンノン平仮名ではないでございます。OH!」

      「・・・・・もういいよ。」

      ちぇっと呟くと、は黙り込んだ。

      「。」

      「・・・・・・なんじゃ。」

      「本当に野宿することになっても大丈夫?」

      「キューちゃんと二人でランデブー。」

      「よくわかんないけど大丈夫そうだね。」

      「・・・・・・・・・・・・・ふあー・・・。」

      もう日は完全に暮れてしまっている。

      城を出るのが昼過ぎだったせいもあるが、夏場だというのに日が暮れるのが早く感じた。


      「(これ以上動くのは危険だな・・・・)」

      「半兵衛ちゃんが心配するでよー。」

      「うん。一緒に謝ろうね。」

      久作がそういうと、は素直に「うん」と答えた。

      頭を撫でてやると、眠いのか猫のようにふああと欠伸をする。


      「ごめん、僕一人で出歩くなって言われてるの忘れてた。」

      「うん、も言われてた。」

      「僕ら二人で行くのってすごい無謀なことだったんだね。」

      「うん、絶望的だね。」

      「兄上に伝えといてって文官に言っといたんだけど、文官止めてくれればよかったのにって思った。」

      「うん、責任転嫁だね。」

      「もうどうしようもないね。」

      「兄上に怒られるね。」

      「兄上怒るよね。」

      「兄上怖いよ。」

      「兄上酷いよ。」
 
      「まだ怒ってないよ兄上。」

      真っ暗なせいかなんだか頭がぼやっとしていて、二人とも会話がおかしい。

      そのまま久作とは、馬から下りて大きな木の根元に腰を下ろした。

      馬の鼻をがぽんぽんと撫でてやると、嬉しそうに馬はぶるるっと鳴いた。

      「馬ちゃん、お疲れ。」

      「、火つけなくてもいいよね?山賊でも寄ってこられたら困るから。」

      「さんぞく?」

      「うん。」

      「怖いの?」

      「・・・怖い、かな。」

      「キューちゃんは怖くないの?」

      「うん、もうそういうのに慣れてしまったよ。」

      「・・・・・・・ふーん・・・・。」

      会話中も、はこっくりこっくりと眠たそうにうとうとしていた。

      それを見て久作は、くすっと優しく笑う。

      「寝ていいよ、。」

      「うーん・・・。」

      の頭を、こん、と自分の肩に乗せてやると、心地よさそうには目を閉じた。

      
 
      

 












































      どうやらは寝たようだ。



      微かに聞こえる寝息に、久作はちらりと横目に見る。

      「・・・・・兄上に色んな意味で怒られそうだな・・・。」

      久作は苦笑いすると、自分の方に寄ってきた馬の真っ白な毛を撫でてやった。

      「・・・兄上もなんだかんだでの事気に入ってそうだよね。」

      答えるようにぶるるっと馬は鼻を鳴らす。

      「気のせいかな。」

      馬は撫でてくれとでも言うように、久作の手に頭を押し付けた。

  
      「・・・僕はなんだか妹ができたみたいで嬉しいんだけどね。」

      ずっと皆から子ども扱いされてきたから、と久作は再び苦笑した。

      




 










      「・・・・兄上の心にも、余裕を与えてくれるといいな。」



      

      久作はそういうと、冷えてしまったの手をぎゅっと握った。










































































      第一回ヒロインと久作の冒険です。

      次回まで冒険は続きますー。

      次は半兵衛出ますよね?出るはずです。出ると思います。(おい)

      久作は、ヒロインのことを妹のようだと思っているみたいですがこれからの展開でどう変化していくんでしょうかウフフフフフ。

      あれ。題名「元気よく」なのに全然元気なくないですか。(黙れ)