Last Oath
























      ・・・・・暑い。









      は勢いよくガバっと起き上がり呟いた。


      「暑い・・・・なんなんだここは・・・・。」


      初夏といえども、窓も締め切っているので猛暑が襲うのは当たり前だ。

      風を通そうと窓に手を伸ばすが、どうしても手が届かない。



      小さくため息をついて、我慢しようと暫く横になっていたのだが、流石に耐えられそうにない。


      「せんぷうき・・・・。」


      一か八か、はバッグを振ってそう呟くと、ゴトンと音を立てて扇風機が出てきた。

      は大喜びで扇風機のスイッチを押す。


      ・・・が。


      「つかない・・・・・。」


      眉間に皺を寄せ、扇風機を睨むと、放り出された元栓が目に入り、はもう一度ため息をついた。


      「暑いーっ!!なんで窓があんなに高いとこにあんのー!!!」


      バタバタと足をバタつかせてみても、涼しくなるわけもない。

      はとうとう耐えられなくなり、部屋から飛び出した。

      部屋で待っていろ、と言われたがもうどうでもいい。


      外に出ると、冷えた風が心地よかった。



      「気持ちい・・・・。」


      は汗を拭って、ぺたりと座り込んだ。




      蝉の声が聞こえる。


      「ひぐらしならいいのに・・・。」


      油蝉の鳴き声は五月蝿いので、あまり好きではない。


      「キューちゃん帰ってこないなぁ。」


      久作は優しいので好きだ。

      ふんわりしていて、マシュマロと喋っている気分になる。(違

      でも、その兄の半兵衛はなんだか、とても冷たく鋭い印象だった。

      久作がマシュマロなら、半兵衛はかき氷だ。

      ・・・・・それもシロップのかかっていない時点のかき氷だ。



      「ふあー・・・・・・・・・・・・・・・・山ばっか!」


      ぼんやりと景色を見て思い出したが、ここは戦国時代なのだった。
      
      学校でも習っているし大河ドラマにもよく使われる時代だ。

      よく考えたら、凄いことではなかろうか。


      「って・・・すごいな・・・!」


      外国にも行ったことがないのに、時代を超えるなんて。


      「帰ったら皆に自慢しよー。」


      そうだ。織田信長あたりのサインを貰って帰ろうか。

      そんなことを考えながら、は、ふふっと小さく笑った。




      「楽しそうだね。」




      声がした方を見ると、そこには竹中半兵衛が腕組みをしてこちらを見下ろしていた。


      「そんなに楽しくないよ。」

      「それは残念だったね。それで君は通路の真ん中に座り込んで何をしているんだい?」

      「夕涼み。半兵衛もする?」

      「遠慮しておくよ。」


      肩を竦めて見せた半兵衛は、スッとに手を差し伸べた。



      「君を呼びに来たんだ。」



      「を?なんで?」



      「紹介するんだ。皆にね。」

      「紹介?」

      「そうだよ。その中に君の知る豊臣秀吉もいる。」

      「え!写真とっとこ!」

      「・・・とりあえずその服を着替えないかい?」

      「やだ!」

      「・・・・どうして?皆の前だ、身嗜みは整えなくちゃ。」

      「このワンピースお気に入りなの!」

      「秀吉もいるんだから、最低限の・・・」

      「やだ!!」

      「・・・・・・・わかったよ。」


      どうやらこれ以上言っても聞きそうにない。

      半兵衛はため息をつくと、を広間に案内することにした。





      「ねぇ、半兵衛って彼女いるの?」


      広間に向かう途中でのの突然の質問に、半兵衛はぴたっと足を止めた。


      「・・・・初めて面と向かってそういうことを聞かれたよ。」

      「いるの?」

      「いないよ。」

      「いないの?なんで?」

      「必要ないからさ。」

      「なんで?」

      「・・・・君は何でも知りたがるね。」

      「なんで必要ないの?」

      「・・・僕には夢があるんだ。」

      「ゆめ?」

      「そうだよ。妨げになるようなものはいらない。」

      「・・・・よくわかんない。」

      「だろうね。」


      半兵衛は苦笑いすると、首を傾げているにどこか悲しそうな笑みを向けた。


      「なんで泣いてるの?」

      「え・・・?」


      何を言っているんだと、半兵衛は振り向く。


      すると。


      「!」


      「大丈夫?」



      はまるで小さい子供を宥めるように、半兵衛の頭に手を伸ばし、背伸びをしながらぽんぽんと撫でた。

      半兵衛の笑顔がひどく切ない表情で、には泣いているように見えたのだ。

      半兵衛が驚いてを見ていると、さらには、ぎゅっと半兵衛を抱きしめた。


      「半兵衛、泣かないで。」      

      「・・・・・・・・僕は、泣いてなんかいないよ。」

      「泣いていいよ。」

      「・・・・・・・・・・・。」


      言っていることが完全に矛盾しているを、嘲笑って突き放そうとしたが、できなかった。


      泣く、だなんて、当に忘れていたことだ。

      世の武将達が血眼になって天下を求める時代、一人で泣いて腐っている暇など無いのだ。


      特に、自分は。




      「僕は・・・泣いてなんかいられないんだ、泣いている時間なんか・・・・」

      「じゃあ今泣いていいよ。」

      「・・・・・っ・・・・だからこんなことしてる場合じゃ」

      「半兵衛きつそうだよ、きついときに頑張ってちゃ楽しくないよ。」

      「・・・楽しんでいる暇も僕にはないと言っているんだ・・・」

      「半兵衛、」

      「もう僕のことはほっといてくれ。」


      これ以上この少女と話していたら、おかしくなりそうだ。

      半兵衛はそう思い、少し強引にを離した。

      だが、は諦めることなく、しつこく付き纏ってくる。


      「ねぇねぇ、が泣ける話してあげよっか?感動するよ。」

      「・・・結構だよ。」

      「あのねー」

      「君の説明じゃ理解できそうにないからね。」

      「なんで?」

      「・・・・・なんでもないよ。」


      嫌味の全く通じないに、半兵衛はため息交じりに言葉を返した。

      歩き始めてからも、の喋りは止まらなかった。


      「半兵衛半兵衛。」

      「・・・・・・・。」

      「半兵衛―!!!!」

      「聞こえてるよ・・・、何。」

      「何で仮面みたいなのつけてんの?」

      「・・・もう放っておいてくれないかい。」

      「もそれ欲しい。」

      「・・・・・・あげないよ。」

      「けち!」

      「何とでも言うがいいよ。」

      「けちけち半兵衛。」

      「・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿。」

      「!!!馬鹿じゃないもん!!!」


      ・・・自分は今日始めてこの少女と出会ったと記憶しているのだが。

      この遠慮なしの会話は何だ。

      秀吉とでさえこんな感情を剥き出しの会話はしたことがない。
 
      いや、したいとは全く思わないが。


      「君が馬鹿じゃなかったらこの世に馬鹿な人間なんていないよ。」

      「君がケチじゃなかったらこの世にケチな人間なんていないよ。」

      「・・・・そんなに僕を怒らせたいのかい?」
      
      「カルシウム取った方がいいよ。」

      「君がいうことはわけがわからない。」

      「お互い様だ。」


      後ろの少女は楽しそうに、自分の真似をしてきゃっきゃと一人笑っている。

      今の時代五つの幼児でもこんな無邪気で礼儀のない者はいない。


      「・・・・・・君はもう少し礼儀を弁えたほうがいいと思うよ。」

      「ご飯食べてないからお腹すいた。」

      「・・・。」


      その上聞く耳持たず、だ。

      こんなのを秀吉と会わせて大丈夫だろうか。

      いや、秀吉なら笑って許すだろうが、こっちがハラハラする。



      「・・・・・・・くれぐれも秀吉に失礼のないように。」

      「りょーかーい。」

      「・・・・・・・・。」


      絶対わかってない。

      半兵衛は深くため息をついた。


      「半兵衛、他にどんな人がいるの?」

      「見ればわかるよ。」

      「他にどんな人がいるの?」

      「・・・・・・・。同僚の石田三成、黒田官兵衛、僕の側近の山之内赤丸。主要人物しか集めていないよ。」

      「山のお家赤丸?シルバ●アの家の名前みたいで可愛いね。」

      「あとは・・・・、善左衛門もいるかな。それと久作も。」

      「キューちゃんも!?」

      「うん。」

      「いえーい、やったぁー♪」


      ・・・・久作は妙に懐かれているようだ。

      なんだかそれが面白くない。

      半兵衛ははっとしてその考えを振り払うように、ぶんぶんと頭を横に振った。


      「どした半兵衛?」

      「なんでもないよ。」



      下らない。


      所詮この少女も夢への糧にすぎない。

      情は勘を鈍らせる。

      妙な感情は持たないことだ。


      「さぁ、そろそろつくよ。」

      「疲れたねー、なんでこんなでかくしたの城。」

      「・・・・何事もなければいいけれど・・・・・・・」


      半兵衛はの質問を綺麗に流して、軍の為とはいえ、この少女を仲間に引き入れたことを少し後悔した。


































































































        ヒロインのキャラは一番書きやすいです。

       これからどんどん半兵衛が壊れていく予定(笑