Last Oath






























      半兵衛は一人、軍略を書き出していた。





      なんだか酷く落ち着かない。



      気がつけばこの城を出た少女の事を考えていて、苛立ちが募る。


      は、助けなければならない。

      デメリットを考慮しても、の必要性は高いのだ。




      「半兵衛。」





      半兵衛はその声に、顔を上げた。




      「・・・・・秀吉・・・・」





      秀吉は浮かない表情で、半兵衛と向かい合うように腰を下ろした。


 
      「・・・を、助けられそうか。」


      「今考えているよ。・・・・けれどそう簡単にはいかないだろうね。」


      「交換条件を出してみてはどうだ。」


      「あっちから何も要求してこないということは、光秀君の一番の目的はあくまでもなんだ。


      魔王殿を餌に出来ない限り、こちらが何を出しても応じることはないだろう。」


      「・・・・・何の目的があってを・・・。」


      「の噂はもう全国に広がりつつある。そうなればを狙う輩は増えてくる。正しい噂だけじゃなく間違った情報もどんどん出回っているんだ。」

     
      「・・と、いうことは・・・・?」


      「わかるかい?噂が噂を呼び、がいれば天下統一できるとか段々間違った方向に行くんだ。人間と言うものは単純だから・・・・。

      
      何か一つ手に入れれば、それを大きな事にどうしても繋げたがる。まぁ光秀君は天下などに興味はないのだろうけれど。」


      「ならば明智の目的は・・・。」


      「彼はただ玩具がほしかっただけだろうね。でも彼の側近たちは違う。」


      「・・・・は無事だろうか。」


      「・・・・・はちょっとやそっとじゃ死なないさ。」



      半兵衛にそう言われると、秀吉も安心したのか少し表情が和らいだ。


      「がいなくなってから・・・、城中の活気がなくなったような気がするのだ。久作はもともと、多くは笑わなかった。のおかげなのだ。」


      「・・・うん、そうだね。」


      「・・・・を、取り戻してくれ半兵衛。」


      「・・・もちろんだよ、秀吉。」




      こうしてる時間すらも勿体無い。

      
      急がなくては。


      

      






























































      「・・・・・・・・・」



      は静かに、目を覚ました。



      「・・・・・っ・・・!!」


      起き上がろうとした瞬間、肩に激痛が走り布団に倒れ込む。


      服が着物になっている。


      体には包帯が巻かれていて、なんだか交通事故にでもあったようだった。



      昨日の事を思い出し、「死ななかったのか」と他人事のように思った。



      「起きましたか。」


      「・・・・・・・・光秀・・・・・。」


      「痛みますか。」

   
      「当たり前だばーか。」


      「そうですか。」


      光秀は何か、怒っているようだった。


      こちらを向こうともせず、ただ淡々と言葉を発していた。


      「何怒ってんのばーか。」


      「・・・・あなたのせいですよ。」


      「が何したの。」


      「私のことを憎くないとか言うから。」

 
      「憎まれたいの?うえー変態。」


      「後悔してしまったんですよ。あなたを傷つけたことを。人を傷つけて後悔するなんて、初めてです。」


      「・・・・・意味わかんない・・・・、自分のせいじゃん・・・・。」


      「のせいです。」


      「・・・・知らないよ・・・・。」




      光秀は、を抱きしめた。


      優しく、壊してしまわぬように。





      「放せ・・・・、ばーか・・・。」



      「私のこと嫌いですか?」



      「・・・ふつー」



      「竹中半兵衛は?」



      「・・・・すき」



      「“風”は?」




      「・・・・・・・・愛してる」




      「気に入らない。」


      「そんなの知らん。」


      「秀満は?」


      「きらい」


      
      のその言葉に、光秀は小さく笑った。





      「私は、貴女のことを殺そうと思っていました。」


      「・・・・知ってる。」


      「でも・・・、何故か殺せない・・・・。」

      
      「・・・・・・・・。」

     
      「・・・・・。」


      「放してよ・・・。」

 
      「嫌です。」

 
      「ねぇ・・・、、帰るから。」


      「嫌です。」


      「やだよ。」


      「私だって嫌だ。」

  
      「の方がやだね。」


      「私の方が嫌だ。」


      「うっさいばかたれ。」


      「風とは人間ですか?」


      「風は風だよ。」


      「男ですか。」


      「女ではない。」


      「男じゃないですか。」


      「ねぇ光秀。」


      「何ですか。」


      「遊びくればいいじゃん。の城に。」


      「貴女の城じゃないでしょーが。」


      「あいつのもんはのもの。」

 
      「のものは私のもの。」


      「んでその光秀のものはのものだから、結局は全部のもの。」


      「とんだ自己中心的考えですね。」


      「そうかな。」


      「そうですよ。」


      「だからの城に遊びおいでよ。そしたらいいでしょ?」


      「無理ですよ。敵同士ですから。」


      「だからの友達として来いっつってんだよ物分り悪ぃな。」

 
      「貴女最近キャラが黒くなってますよ。」


      「そうかな。」


      「そうですよ。」


      「つべこべ言わずにとりあえずあっちの城いくぞ。」


      「死にますよ私。」


      「光秀は死なないと思うから大丈夫。」


      「・・・・・・・・それはありがとうございます。」


      「その代わり半兵衛も殺さないでね。」


      「出来る限りそうします。」


      「物分りいいね。」


      「当然です。」



      と光秀は薄く笑いあってから、服を着替えた。




   




      「・・・・今日は白じゃないのですね?」


      「・・・・うん、もう白は着ない。」


      何かを悟ったようなの表情に、光秀は怪訝そうに首を傾げた。




      黒い服。




      自分が刀で破いてしまったのだから、あれを着れないのはわかるが、やはりどこか違和感がある。

      前の白い服と形は同じだが、色が正反対なだけあってやはり全く違う。


      「・・・似合いますよ。」


      「黒は女を美しく見せるのよおほほ。」


      「そうですね。」


    
      色気の欠片もない少女だと思っていたが、ふとした瞬間少女とは思えないほどの色香を見せる。


      それが黒を着るとさらに強調された。



      「何故黒に?」


      「・・・んー・・・・、なんでだろうね。」


      その曖昧な返事に、光秀はさらにわけがわからなかった。



      「私の城に来て、無事にもとの場所に帰るのはあなたが初めてですよ。」


      「マジで?今日は赤飯だ。」


      「赤飯はあまり好きではありません。」

 
      「も納豆ご飯の方が好きだな。」


      「気が合いますね。」


      「合わねぇよ。」



      と光秀は護衛もつけずに、門を潜り城外に出た。


      後ろから何やら引き止めるような声が聞こえたが、無視して馬に跨る。



      「ズラかるぞ。」

 
      「おう。」



 
      はサングラスを書け、光秀にもかけさせた。


      「何ですかこれ、見にくい。」という光秀を無視して、前に進ませる。


      「おら、これは手袋だ。牛革の黒だぜ。」


      「どうも。」


     
      どこから見てもかなり怪しい二人。


      白馬に乗っているところが、その怪しさをさらに際立たせていた。



  


















































      「半兵衛様!!!!」






      ガサッと大きな音を立てて、兵士が部屋に入ってきた。


      「・・・なんだい、騒がしい。最近我が軍でその襖の開け方は流行っているのかな。」


      「あ、いえ申し訳ございません;;怪しい二人組がこちらの城に向かってきているとのことでして・・・・」


      「怪しい二人組?」

     
      「その奇妙な姿から、様と明智光秀と思われます・・・・」


      「!!!」



      二人組、ということは、護衛もつけずにこちらに来ているということか。

 
      どういうことだ。



       

      「本当に二人だけなのか?」


      「はっ、周囲を探しておりますが、全く人の影はありませぬ。」


      「・・・そうか。」



 
      半兵衛は、全身が安堵しているのを感じた。


      ・・・全く迷惑な少女だ。





      半兵衛はフッと笑みを零した。



      「・・・・どうなされますか。」


      「僕一人でいい。話があるのだろうからね。油断はできないけど。」


      「・・・・しかし・・・。」


      「大丈夫だ。」


      半兵衛のその言葉に、兵士は短く返事をし、敬礼してから部屋を出て行った。







      「・・・では僕も出ようかな。」










       が、無事だといい。


       先ほどは安堵したが、やはり完全にが無事だとはわからない。


       自分の目で確認するまでは、気を抜けないのだ。


       が、何も変わらぬままだといい。
















































      「ヘイ!!!銀髪の兄ちゃん出てきな!!!!」


      「、私も銀髪です。」


      「あ、そうだった。ったくそういうことは早く言えよ。」


      「見ればわかる事実です。」


      「ヘイ!!!半兵衛の兄ちゃん出てきな!!!!」


      「竹中半兵衛に兄などいるのですか?」


      「そういう意味じゃねぇのさボーイ。」


      「そうですか。」


      「シャイボーイ竹中!!!出てきたまえ!!!さんがお帰りだぞヘーイ!!!」


      




  
  

      

















      「































      その優しげな声に、は自然と笑みが零れるのを感じた。





 
      「半兵衛!!!!!」


      「・・・・おかえり、。」


      馬から飛び降り、は半兵衛に飛びついた。



      半兵衛はを抱きとめると、光秀の方に鋭い視線を向けた。


      「よくを返したね。やはり煩すぎて邪魔だったかな?」

 
      「そりゃねぇべ竹中さん。」


      「まさか、煩いなんてものじゃありませんでしたよ。」


      「おいおいおい光秀ぇ―。そのグラサンあげたのは誰だと思ってんだおーい。」


      「・・・・・・。」


      の言葉に、半兵衛は眉を寄せた。


 
      「半兵衛?」


      「なんでもない。」


      「そうかい?んで半兵衛、あんね、光秀たまに遊びに来ていい?」


      「駄目に決まってるだろう。敵だよ。」


      「友達としてくるんだよー。」


      「関係ないね。僕にとっては敵だ。」


      「だからの友達としてだって。」


      「駄目。」


      「なんでぇいいじゃあああん!」


      「絶対駄目。」

 
      「なんでよなんでねぇなんでーーーねーなんでーーー。なんでーなんでーなんでなんでなんで〜。」


      「駄目なものは駄目。今は戦乱だよ。そんな甘いものじゃない。」


      「・・・じゃあいいよっ!!光秀!!これを受け取れーー!!!」


  
      「?」


 
      光秀はの投げた物体を手に取り、それを不思議そうに見回した。




      「携帯だよ!!!と貴様はこれからメールという距離を越えた絆により結ばれるのだ!!!」


      「・・・・・・・・・・・。」


      の言葉に、さらに半兵衛は顔を顰める。





      光秀はサングラスをかけたまま、どこか穏やかな笑みを浮かべ、馬を引き返した。



      「ばいばーーーい!!!!メールするからねーーーー!!!!!」


      「。」


      「帰っちゃったねー。」


      「。」


      「んぁ?」


      半兵衛は、の手首を掴んで自分の方を向かせた。



      「っ!!!」



      途端肩を掴まれ、激痛が走る。



      「・・・・誰にやられたんだい?」


 
      「・・・・え・・・・・・・、エビ。

 
      「エビじゃないだろう。高級食材で大怪我してたまるか。


      「だ、大丈夫だよ。もうそんな痛くないもん。」


      「何が大丈夫なんだい、ずっと我慢してただろう?」


      「してないもん。」


      「・・・・着物も変わって・・・、こんな怪我させられてよくあんなことができるね。」


      「・・・・・・だって・・・・、そんな怒んないでよ・・・・・。」


      「・・・・君は単純すぎる。人が好過ぎる。優しすぎる。そんなんじゃまたこういうことが起こるし、次は無事に帰ってこれるかわからないよ。」


      「だって・・・、光秀だって、優しいとこあるんだよ?そんな酷い人じゃ・・」


      「そういうところが単純だっていってるんだ。」


      「だって、本当に酷い人は見ればわかるよ!で、でも光秀は違うもん・・・!」


      「光秀光秀って・・・、そんなにいいなら帰ってこなければいいじゃないか・・・!」


      「な、なんでそんなこと言うんよ・・・!!!!だって・・・、ここが好きなんだもん・・・・!!!」


      「・・・・っ・・・・、ごめん、・・・。」


      「・・・・・も、ごめん半兵衛・・・。」


      は半兵衛の背に腕を回した。







      半兵衛、と自分の名を呼ぶの声が心地良い。


      キューちゃん、ひでピーと他のものはあだ名で呼ぶのに、自分だけ本当の名で呼んでくれるのが、どこか好きだった。


      なのに、”光秀”とその声で呼んでいて、腹が立ったんだ。


      














































      「ただいま、半兵衛」



 
      「おかえり、



































      






















































     帰ってきちゃった。(おい)

     もうちょっと引き伸ばすつもりだったんですがね?あれおかしいな。

     まぁいいです。いいんですよ。