Last Oath
「ふーんだ・・・半兵衛のバーカ・・・・・。」
なんだかくねくねと捻じ曲がった道を、只管走る。
でも確かに、自分が悪かったのかもしれない。
半兵衛が一生懸命なのに、何も知らないのに無理やり止めさせようとして、挙句の果てに書類に墨を零して邪魔をして。
「・・・・・・・の、バーカ・・・・・・・。」
やっぱり、帰って謝ろうかな。
でも、今更戻っても半兵衛は城に入れてくれないかもしれない。
嫌われて、しまったかもしれない。
「おや、一人ですか?」
どこか楽しそうな、男の声がした。
「?」
は俯いていた顔を上げた。
そこには、笑みを浮かべている銀色の長い髪の男が立っていた。
「攫う手間が省けました。」
「誰?」
「クク・・・・・名を聞くときは、自分から名乗るものですよ。」
「・・・・じゃあいい。」
「クククッ・・・面白い人だ。いいでしょう、私は明智光秀と申します。」
「明智光秀?なんか知ってるー。えっとー本能寺。」
「アーッハッハ!!!よくぞ言ってくれましたそうですその明智光秀です!!」
「・・・・・・・・なんかキモイ。」
「さぁ、あなたの名を教えてください。」
「。」
「、ですか。フフ・・、、私と来ませんか?」
銀髪の男・明智光秀は、すっと長い腕をに伸ばした。
「どこに?」
「私のところへ。」
「なんで?」
「私が気に入ったからです。」
「なんか・・・やだ。」
「何故です?追い出されたのでしょう?」
「・・・・・・・。」
「このままではあなたはのたれ死んでしまいますよ。」
「・・・・飽きたらここに帰ってきてもいい?」
「フフッ・・・アハハハハあーイイ愉しい!!」
早くも光秀の変態発言に慣れたは、歩き出した光秀の後ろを自転車を引きながらついていった。
「ねぇねぇ、なんて呼べばいい?みっちって人がもういるからね、あだ名が思いつかない。」
「そのままでいいですよ。」
「光秀?」
「ええ。」
「・・・・なんかいやだけどまぁいいや。」
少しだけ光秀のところに行って、ちょっとしたら帰ろう。
その間に半兵衛に謝る言葉を考えよう。
そう思い、は小さく安心したように笑った。
「まだ見つからないのか?」
半兵衛は苛々したように兵に問うた。
からもらった薬を飲むと、たちまち風邪は治ってしまった。
やはり、の世界の技術は凄い。
「はっ・・申し訳ございません・・・・。範囲を広げて探し回っているのですが、様と思われる少女は・・・・・。」
「いったい何をしているんだ?ほど目立つ少女なら、情報の一つでも得られるだろう?」
「・・・・も、申し訳ございません・・・・。」
半兵衛が話を続けようと口を開いたとき、勢いよく弟の久作が部屋に入ってきた。
久作は走ってきたのか、息を切らしていた。
「兄上っ!!!が・・・・!!」
「!見つかったのか!?」
「がっ・・・長い銀髪をもった男とともに歩いていたという情報が・・・!!」
「長い・・・・銀髪・・・・・?!」
特異な特徴。
自分が知っている限り、そんな男は一人しかいない。
「明智・・・・光秀か・・・・!!」
厄介な奴に捕まってしまったようだ。
だが、『一緒に歩いていた』というあたり、強引に連れて行ったわけではないらしい。
「は口車に乗せられたようだね・・・・」
「どう、しますか・・・・?」
「・・・・僕に対しての復讐のつもりなのかもしれない。下手に手出しすればが危ない。」
「・・・復讐・・・。」
「本人は恐らくこの状況を楽しんでいるのだろうね。を早々に殺すことはないだろうけど・・・・。」
「ですがこの状況に飽きてしまったら・・・・」
今にも泣き出してしまいそうな弟を、あやすように頭を撫でる。
「大丈夫だ、は絶対に助ける。」
強い言葉に、久作は少しだけ表情を和らげた。
だがやはり、心配で仕方がないようだ。
「大丈夫だよ久作。
・・・・・は、必要だからね。」
失うわけにはいかないと言って、半兵衛は弟を元気付けるように笑った。
「兄上・・・・・。」
「のことだ。そう簡単には死なないさ。」
つられて久作も笑う。
久作は、お礼を言ったあと、大分落ち着いた様子で部屋を出て行った。
「・・・・・はぁ・・・・・。」
半兵衛は誰もいなくなった部屋で、一人頭を抱えた。
久作にはああ言ったが、相手はあの明智光秀だ。
気まぐれに何をし出すかわからない。
ないとは思うが、もしかしたらはもう既に殺させている可能性だって、ないわけではないのだ。
苦しめて苦しめて、身体的にも精神的にも追い詰めていく異常者。
戻ってきたが元のままで帰ってこられるかと聞かれれば、応とは言い難い。
「・・・・・っ・・・ゴホッゴホッ・・・!!!」
口内に広がる、鉄の味。
がいるときは、まるで治ってしまったかのように咳も出なかったのに。
は、普通の少女だ。
未来から来たという以外、特別な能力を持つわけでもない。
でも、不思議なものを持っている。
それは形としてではなく、何かもっと別のもの。
「・・・・っ・・・はぁっ・・・」
喉が熱い。
慣れることのない痛みが、どこというわけもなく疼く。
半兵衛は咳き込みながら、声にならないままの名を呼んだ。
「きゃーーーーーーーーーー!!!!!」
は自分を見て絶叫されたことに、不満そうに顔を顰めた。
「・・・・・今度これ誰?」
「・・・・秀満です。」
「秀満?」
「ええ。」
「光秀とか秀満とか紛らわしいよ。いっそポン子とピン子にしちゃえば?」
「・・・・それこそ紛らわしいですよ。」
光秀はに言葉を返しながら、城に上がりこんだ。
もサンダルを脱いで持っていく。
「みみみみ光秀さまっ・・・!!こ、こ、これはどういう!?」
「です。今日からここに住みますから。」
「よろしくな―。」
ズケズケと当然のように自分の前を通り過ぎていく少女。
当主の気まぐれぶりは知っているが、生きたままの少女を連れてきたのは始めてだ。
「も、もしかして豊臣の・・・・?!」
「ええそうですが。何か文句でも?」
「ええありますともたっぷりと!!!」
今日こそは言わせていただこう!!と意気込んで、秀満は自信たっぷりに言った。
「・・・ほう・・・・・・?強くなりましたねぇ秀満?いいですよ言ってみてくださいほらどうぞ?」
「ごめんなさい調子乗りました。」
呆気なくペコリと頭を下げる秀満。
この恐ろしい主の前では、意気込みもくそもあったものではない。
「とりあえず彼女はここに住みます。文句はないですね?」
「は、はい・・・・・・。」
この軍は恐怖に支配されているからこそ強いが、流石に豊臣の軍事力に敵うとは思えない。
ましてやあそこには天才軍師がいる。
その伴侶を攫ってきてしまうなど、自分もついに終わりか。
「短い人生でござった・・・・・」
「・・・・この人もちょっと変なんだね。」
「そういうあなたも変だと思いますがね。」
そう言って光秀は、の腕を手を引いて自分の部屋へ案内した。
「ここは私の部屋です。いつでも来てどうぞ。」
「・・・・・・・・。」
半兵衛とは違う。
本当に大切なとき意外来るなと言われていた。
は、そういえば今は夕方だとぼうっと思った。
「光秀。」
「なんです?」
「やっぱ帰る。」
「おや、もう飽きたのですか?」
「だって、寂しいんだもん。」
「・・・・・・・・。」
先ほどまでニヤニヤと笑っていた光秀だったが、のその一言に急に真顔になった。
「私だってあなたがいないと寂しい。」
はその言葉に、きょとんとした。
「今日はじめて会ったばっかりなのに?」
「時間は関係ありません。」
「あの人がいるじゃん。あの、変な人。」
「秀満ですか?あれは別にどうでもいいですから。」
「半兵衛に会いたい。キューちゃんにも会いたい。」
「そんなこと言わないでくださいよ。困ります。」
光秀は本当に困ったような顔で、をじっと見た。
「まだ駄目です。」
「・・・・・・。」
「それとここから一人で帰ることなんて不可能ですから。」
「・・・・むー。」
「ククク・・・大丈夫ですよ、すぐに慣れます。」
光秀はさきほどのまじめな表情を一変させ、顔を緩ませた。
「・・・・・あなたはここで・・・いずれ死ぬのですから・・・・。」
その不気味な声は、に届かなかった。
うおー。
なんかヤバイ展開ですねー。
でも大丈夫です。多分ね。(おい